〜味覚の世界へようこそ〜
(1)味の種類
1)4基本味と5基本味

図1 ヘニングの味の4面体
味の種類については、古くより甘味、酸味、塩味、苦味を4基本味とする考え方があり、ヘニングによって図1に示すような味の4面体が示された。
  2種の味をもつ物質は4面体の稜線上に示され、3種の味をもつ物質は4面体の空間に位置づけられる。しかし、現在では旨味を加えて5基本味とする考え方が有力になっている。旨味は甘、酸、塩、苦の味を混合してつくることのできない独立した味である。

2)甘味(sweetness)
代表的な甘味物質はしょ糖であるが、その他の単糖類や二糖類にも甘味を呈するものが多い。代表的な甘味物質の種類と特徴を表1に示した。

表1  主な甘味物質の種類と特徴

分類
甘味物質 甘味度
(しょ糖を1とした時)
甘味の特徴
糖類 単糖類 ブドウ糖
(グルコース)
0.6〜0.7 さわやかな清涼感のある甘味
水に溶解直後がもっとも甘い
果糖
(フルクト-ス)
1.2〜1.7 甘味の後切れがよく、清涼感のある甘味。低温の方が甘い。
二糖類 しょ糖
(スクロ-ス)
1.0 優れた甘味で、温度による変化がなく安定した甘味。
麦芽糖
(マルト-ス)
0.3 コクのある甘味。
しょ糖誘導体 カップリングシュガ- 0.5〜0.6 しょ糖にぶとう糖を結合させた糖で、あっさりした甘味。
フラクトオリゴ糖 0.6 しょ糖に果糖を1〜3個結合させた糖で、しょ糖に極めて近い甘味。
糖アルコ-ル 還元糖麦芽糖
(マルチト-ル)
0.8 ぶとう糖とソルビト-ルを構成成分とする糖アルコ-ル。ダイエット甘味料。まろやかな甘味。
還元ぶどう糖
(ソルビト-ル)
0.5〜0.8 多くの果実や海藻にも含まれている糖アルコ-ル。爽快な甘味。
配糖体 ステビオサイド 120〜150 ステビア属の葉より抽出。特有の後味や苦味が残る。
グリチルリチン 170〜250 甘草の根より抽出。特有の後味が残る。
アミノ酸系 アスパルテ-ム 180〜200 アスパルチルフェニルアラニンメチルエステルの別名。しょ糖に似た自然な甘味であっさりした後味。ダイエット甘味料。
化学合成品 サッカリン 200〜500 低濃度では甘いが、高濃度では苦い使用量については制限がある。

 しょ糖は化学構造上、α型のブドウ糖とβ型の果糖が還元基間で結合した二糖類であるため、α型とβ型の相互変化がなく、溶液中での甘味の強さは安定している。しかし、加熱すると(約140℃以上)加水分解を起こして転化糖となるが、転化糖はぶどう糖と果糖の混合糖であるため、甘味の強さはしょ糖よりも強くなる。
 果糖は結晶上ではβ型であるが、水に溶かすと一部がα型に変わるが、一定の割合で平衡に保つ。β型はα型の3倍くらいの甘さを持つが、低温の方がβ型の比率が高く甘い。

3)酸味(acidity,sourness)

酸味は水中で解離して水素イオンを生ずる無機酸、有機酸による特有の味である。酸味の強さはpHとは必ず一致せず、酸の種類によってことなる。食品中の主な有機酸には、酢酸、くえん酸、乳酸、りんご酸、酒石酸、がある。表2に食品中の主な有機酸と呈味の特徴を示した。酸味は食べ物にさわやかな味を与え、食欲を増進させる。

  表2 有機酸と酸味の特徴

有機酸の種類

所在%

酸味の特徴
酢酸 食酢(4%) 刺激的臭気のある酸味
くえん酸 柑橘類(1〜4%) おだやかで爽快な酸味
乳酸 乳酸飲料(0.5〜0.9)
漬け物(0.1〜0.5)
渋味のある温和な酸味
DL-りんご酸 りんご、なし(0.5〜0.7) かすかに苦味のある爽快な味
こはく酸 日本酒(0.18) こくのあるうまい酸味
D-酒石酸 ぶどう(0.5〜1.0) やや渋味のある酸味
L-アスコルビン酸 野菜、果物(0.02〜0.1) おだやかで爽快な酸味

4)塩味(soltiness)

塩味は中性塩の示す味であるが、純粋な塩味を呈するものは塩化ナトリウム(食塩)だけで、他の塩類はいずれも雑味をもっているが、塩化カリウムの味が最も食塩に近い。食塩は食べ物に加えられるか、あるいは含むことによって他の味と調和し、美味しさをつくりだすことに大きな役割を果たしている。

5)苦味(bitterness)

苦味は一般に好まれる味ではないが、ごくわずか含まれている場合に食べ物の味として好まれる。食品中の主な苦味物質を表3に示した。

表3 食品中の主な苦味物質

分類

苦味物質

所在
アルカロイド カフェイン
テオブロミン
茶、コ-ヒ-、コーラ、
ココア、チョコレ-ト
テルペノイド リモノイド
ククルビタミン
フムロン
ルプロン
柑橘類
うり類
ビールのホップ
ビールのホップ
配糖体 ナリンギン
ヘスペリジン
ソラニン
サポニン
柑橘類
柑橘類
じゃがいも
ピーナッツ、アスパラガス
無機塩 硫酸マグネシウム にがり

6)うま味(umami)

旨味は1960年以降の研究によって、甘、酸、塩、苦と並ぶ5基本味の一つに加えられている。うま味物質は大別して、アミノ酸系と核酸系に分類できる。
 1、アミノ酸系;代表的なアミノ酸系うま味物質は、だしの材料であるこんぶの旨味の主体であるL-グルタミン酸の塩類、とくにナトリウム塩(MSG=mono Sodium Glutamate)である。pH7付近でもっとも旨味が強く、酸性でもアルカリ性でも旨味は低下する。

 2、核酸系:かつお節のうま味物質がイノシン酸の塩類(5`-イノシン酸ナトリウム)、まつたけなどの旨味物質がグアニル酸の塩類5`-グアニル酸ナトリウム)であることが明らかにされている。
 グルタミン酸ナトリウムは単独でもうま味の機能を発揮するが5`-イノシン酸ナトリウムや5`-グアニル酸ナトリウムとの併用によって、相乗効果のあることが知られている。
   食べ物のおいしさの決め手は”だし”にあるといわれるように、おいしさづくりは、うま味の上手な生かしかたにあるといえよう。MSGの効果については、1:食品の味の強さを増す。2:食品のうま味の持続性、こく、パンチ、まろやかさ、重厚感などを増す。3:牛肉らしさとかとり肉らしさといった食品固有の印象を強化することなどが考えられる。


6)その他の味
辛味、渋味、アルカリ味、金属味などがある。5基本味とは知覚様式が異なり、味覚のみならず、口腔内を刺激する痛感や温度感覚などが複合したものである。表4にその他の味の種類と特徴を示した。その他に、こく、広がり、厚み、深みなどと呼ばれている味もある。

表4  その他の味の種類と特徴

味の種類
 呈味の特徴 呈味成分の所在
  辛味
(pungency)
1.5つの基本味とは伝達様式が異なり、口中の皮膚を直接刺激する痛感、温度感覚などが複合したものである。
2. 適度な辛味は、味に緊張感を与え、食欲を増進させる。
カプサイシン(とうがらし)
ピペリン、シャビシン(こしょう)
サンショール(さんしょう)
ジンゲロン(しょうが)
タデオール(たで)
ジアリルスルフィド(たまねぎ)
ジアリルジスルフィド(ねぎ、にんにく)
アリルイソチオシアネート(からし)

渋味
(astringency)
1.渋柿のタンニンなどを代表する成分によって口内に引き起こされる味覚。
2.渋味は収斂性のある味。
3.強い渋味は他の味と混じり合って特有の風味をつくる。
タンニン類
アルデヒド
金属塩
(茶、未熟な果物、ぶどう酒)

えぐ味
(acridity)
1.たけのこやぜんまいをゆでた時のゆで汁のような渋味を伴った苦味によって、口内に引き起こされる味覚。

2.舌やのどを刺激する独特の不快な味である。

3.あくの味ともいわれる。
ホモゲンチジン酸
シュウ酸
配糖体
無機塩類(たけのこ、さといも、
ぜんまい、わらび、ふき、たで、メロン)

金属味
(metallic)

1.金属に舌が触れた時に感じるような味覚。

2.金属に長時間触れた時に食品につく味である。

金属イオン
(鉄、アルミニウム)
(有機酸を含んでいる野菜)
アルカリ味
(alkalinity)
1.重曹(炭酸水素ナトリウム)を代表する成分によって口内に引き起こされる味覚。

2.ぼけた味、しまりのない味に用いる。

3.通常の食品は中性か微酸性なので、体験は少ない。
重曹を入れて、ゆでたぜんまいやわらびなどを十分に水洗いしない時にアルカリ味を感じることがある。


2)味はどこで感じるの・・?

図1 基本味を感じる舌の部分

図2 舌乳頭と味らい
 味の知覚は舌により行われ、舌の部位により、それぞれの基本味に対する感覚の鋭敏さがことなる。およそ舌の先端(舌尖)および両端(舌縁)で鋭敏で、舌背の中央と舌の奥(舌根)では比較的鈍い。それぞれの基本味は図1に示すように、舌尖で甘味を、舌の側縁で酸味を、舌尖および側縁で塩味を、苦味は舌根でよく感じる。また、旨味は舌根近くで感じるといわれている。
  味覚は舌の表面の舌乳頭の味らいで感受され、味らいの中の味細胞に呈味成分が達し、その刺激が味覚神経を通して脳に伝授され、味として感じられる(図2)。
  辛味、渋味は、味細胞ばかりでなく、舌表面の味覚神経に対する刺激そのものによるところも大きいといわれている。
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