アイスクリ−ムの歴史って?

中国では紀元前1100年の昔から氷を食物の保存に利用し、氷室を作って夏の間も冬の氷を貯蔵していました。ローマでは、皇帝たちがワインを冷やすためにアルプスからはるばる氷を運ばせ、わらを厚く敷きつめた下に保存しましたし、インドのムガール帝国の支配者たちはヒマラヤ山脈の氷や万年雪をデリーに運ばせたといいます。また16世紀のトルコには、シャーベット(この場合はフルーツドリンクのこと)を薄めるために使う氷雪を詰込んだ地下貯蔵庫があったという、旅行者の記録が残っています。スルタンの宮廷では、デザートとして、凍らせた果汁を盛ったボールが食卓を飾っていました。
 ですが、現在私達が『アイス』と呼んでいるような氷菓子を発明したのはイタリア人だったようです。イタリアでは17世紀初めに人工的なフリージングが始まりました。熱した牛乳をさまして作ったクリームに甘味をつけ、ピューレ状の果物やジャムで風味を加え、スズのアイス用のつぼにいれてわらで包み、氷と塩と硝石を口までいれたバケツに沈めておいたのです。
17世紀の中ごろになると、アイスはヴェルサイユ宮殿に伝わり、そこからヨーロッパ各地の宮廷へと広まっていきました。当時のアイスは高価な食べ物で、一般の人の手に届くようなものではありませんでした。しかし、17世紀も終わりごろになると、飲料販売人のギルドが作るオー・グラセ(氷菓子の一種)やネージュ(カキ氷)がパリに当世風のカフェで売られるようになりました。
イギリスでは、田舎の屋敷の敷地内に貯氷庫が建てられ、続いてアイスクリームが作られはじめました。イギリス人は最初フランス本の翻訳を通してアイスクリーム作りを知りました。『イールズ夫人の料理集』(1718年)には最も初期のイギリスのレシピが出ています。1751年にはハンナ・グラスが自署『シンプルで簡単な料理法』にアイス(白目<スズを主成分とする鉛などの合金>の鉢の中で凍らせながらかき混ぜるというもの>を加えました。後世の本にはフローズン・ムース、アイスクリーム、ウォーターアイス(水、砂糖、果汁などを混ぜて凍らせたもの。シャーベットはウォーターアイスの一種)の手のこんだレシピがいろいろ登場しています。一方、フランス人はウォーターアイスにこだわりつづけ、この手のアイスがすたれることはありませんでした。新たに、『ソルベティエール』と呼ばれる、中身が凍結するまで回転する仕組みの型が開発され、装飾的な型抜きアイスが非常に流行しました。こうしたアイスはまずソルベティエールを使って作られ、次に氷と塩の中にいれるやり方に移ってきました。
 アメリカでは、18世紀も終わりにさしかかったころ、ウォーターアイスよりむしろアイスクリームがもてはやされるようになりました。ジョージ・ワシントンはアイスクリームメーカーを所有するほどで、第3代大統領トマス・ジェファーソンは、アイスクリームの上にメレンゲの層をつくり、オーブンで焼いた『びっくりオムレツ』を客にだしています。1846年に手回しアイスクリーム・フリーザー(主婦ナンシー・ジョンソンの発明)が発明されるまでは、アイス作りは難しい仕事でした。しかし、その後アイスクリームの製造販売はブームになり、アメリカは世界一のアイスクリーム大国になっていきます。
 現在ではアイスは世界中で親しまれています。凍らせて食べるこの製法の素材は無限といってもよいでしょう。
参考文献:食卓のおしゃべり アイスクリームとシャーベット(ジル・ノーマン著)リトルライブラリー